2013-08-11

森博嗣「ヴォイド・シェイパ」「ブラッド・スクーパ」

森博嗣の剣豪小説シリーズの1作目「ヴォイド・シェイパ」と2作目「ブラッド・スクーパ」を読んだ。物心ついたときから、山の中で師匠と暮らし、師匠の死後に山を降りてきた侍ゼンが主人公。一人称で物語は進み、生死や人の価値について思索しながら旅をする。スカイクロラに近い文体で、剣術バトルがときどき描かれる。戦いや他の人との会話を通して思索していく流れもスカイクロラっぽいし、全体的に静かな感じも似ている。剣豪小説という体ではあるけれど、時代や場所がまったく分からない。登場人物の名前もカタカナ表記されている。

ここから、全力でネタバレと、私の妄想を無粋にも書き連ねる。スカイクロラをはじめ、他の作品にも言及するので、そのつもりで。


 






主人公ゼンが「この国よりももっと大きな、すべての国を統一する方」の血筋であるようなことが、ほのめかされる。時代背景は不明。性別が明に記述されてない人物が何人かいる。主人公はやたらと内省する一方で、あまり深く考えてない人物とよく関わる。どうも狭い世界に閉じられている印象があって、これは世界の構造がスカイクロラや、百年シリーズと似ている。

スカイクロラでは、戦争請負会社が戦争していて、戦局などは一切出てこない。ただ戦争している。登場人物の名前は日本っぽいがカタカナ表記で、出自が分からない。

百年シリーズのルナティックシティもイルサンボックも、閉じられた街で住民の生活が完結していて、外の世界の状態がよく分からない。外の世界から分離した状態になっている。Gシリーズで真賀田四季がほそぼそとやっていた実験が、外乱の少ない環境でさらに進められているように見える。サエバミチルは真賀田四季(と久慈)の子孫だろうから、国より上のレイヤを統一する者の血筋だ。

無粋な妄想というのは、スカイクロラとヴォイド・シェイパの世界は、真賀田四季がいる世界だろう、ということだ。真賀田四季の箱庭が描かれている、と思いながら読んでいる。