2009-05-19

銀のさらのCMが、印象に残るわけ

方々で言及されている宅配寿司「銀のさら」のCMが大人気の模様です。ひどすぎます。ここでいう「ひどい」は「意表をつく内容が素晴らしい」とほぼ同義です。おそるべし比較広告。



どうもニコニコ動画や YouTube から消えていってるので、すぐに見られなくなりそうです。







それにしても記憶に残るCMです。これは sticky なメッセージではないかと考え、ちと検証してみましょう。



Chip Heath と Dan Heath による「Made to Stick」という本で、メッセージを記憶に残すために必要な6つの要素を上げています。記憶に残る都市伝説や、マーケティングメッセージ、あるいはプロパガンダなんかも、この6つ要素があるのだ、と。曰く「Simple」「Unexpected」「Concrete」「Credible」「Emotional」「Stories」。これらが銀のさらのCMで、どのように活用されているか見ていきます。



Simple: このCMは非常にシンプルです。宅配寿司が、なんとなれば銀のさらの寿司が、他の外食/中食オプションよりも良いのだ、ということです。一貫して競合と比較しています。



Unexpected: このCMの基本的なキモはここにあるかと。「宅配ピザはセカンドベースと間違われるかも知れない」とか。しかも、唐突に草野球の走者がスラインディングしてきます。ちょw ねーよwww。あまりに意外なので印象に残るわけです。しかも各比較対象にたいして数秒しか時間を使わずに、ぽんぽんとつぎのネタを繰り出します。必然的にシンプルな話になるわけです。



Concrete: 非常に具体的です。「こちらのほうが信頼性が高い」みたいな話ではなく、寿司屋の配達の人と、レストランの店長ロボットがルームランナーで走っていて、ロボットがこける。で、安全だ、と。セカンドベースにしてもそうです。



Credible: 信憑性。このCMの内容にはまったく信憑性がありません。もうそれは、おそろしいまでにない。中華料理で食べたカニの仲間が来るわけがない。このCMでは、信憑性を完全に逆手に取っています。明かな嘘によって記憶に残しています。さらに、信憑性を完全に放棄するというのは、メタな意外性を創出することになっています。



Emotional: Heath の本では、恐れなどの感情を喚起させることで、記憶に残させる、という話です。このCMの場合は、笑い、です。職場で両サイドの席の同僚に、勤務時間中、この CM を見せたら「ぶほっ」みたいな感じになっていました。この強烈な感情の喚起が、記憶に粘りついています。



Stories: 物語性もあります。いろんな逸話を紹介していますが、いずれも一貫して「宅配寿司がよい」と比較しつづけます。そして最後に、宅配寿司は銀のさら、とか言うわけです。あるいは銀座の寿司屋と、銀のさらのどちらを選ぶか、というCMでは、人々がどんどん銀のさらを選んでいく(あるいは妨害されていく)様が描かれます。風雲たけし城みたい。これもストーリーが明確です。



とまあ、えらそーに色々かきましたが、こういうCMが見られるのなら、テレビ買おうっかなぁと思った次第です。